Tec-Jyamのつぶやき 電池関連編!

電池を取り巻く最近の動向について、色々と”感じる”ことがあり、ここで、「つぶやき」・・・を載せさて頂きます。 
あくまで、個人的なイメージであり、かつ私見でもありますので、
軽くお聞き流し下さい!

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2024.01.22 ほんとにいい技術だな!って思う・・・現行の電池技術

一昔前までは、LIBは携帯電話などのポータブル機器市場の電池であった。現在はそれより桁違いの大きな市場、車載市場と電力貯蔵市場で主流になりつつある。車載市場の中でもBEV用では大容量の電池を使用するので、電池メーカー各社はEV用電池の開発にしのぎを削ってる感がある。
そこで、BEV用に「こんな電池技術が欲しい」というようなことを妄想をしてみた。
<その1>
個人的感想だが、現在EVによく用いられているNMC/黒鉛に類する電池系のLIBはEVには不向きだと思ってる。EVとしてこれら高エネルギ密度の電池系を目指すのも一つの方向だが、EVの将来性を考えた場合、その優先順位は高くないと思っている。なぜなら、急速充電性と安全性と長寿命の並立が困難な電池系だからだ。すなわち、EVの発展を望むなら、そこそこのエネルギ密度があり、急速充電ができて、かつ安全な電池が最も有望だと考えている。 長寿命であればなおさら良い。

そのような観点で最近の電池技術を俯瞰してみると、結構良い素質の電池系がある。 それは、東芝が開発している「SCiB、およびその開発品」である。詳細な技術説明&理由は省略するが、現時点では、コスト的に課題はあるものの、現行電池の中では素質が最も良い電池系と感じる。
もし、私が電池メーカーの経営者なら、その技術を買い取ってでも育てたい電池系である。コスト対策と量産性の努力次第では、EVの救世主になりえると思うからだ。
<その2>
現在LIBによく用いられているセパレータはPPやPE樹脂を一軸延伸や二軸延伸で薄型化した多孔質膜である。これも個人的感想であるが、これらセパレータはEV用LIBには機能的に物足りなさがある。それは、電極反応の均一性を確保する構造になっていないからだ。LIBのような電解質濃度が低い電池系で、高速の充放電を行う場合は、特にその影響は大きい。

電極反応の均一性の観点から現行のセパレータの中で極めて有望な素質のセパレータがある。それは、3DOMセパレータである。極めて均一性の高い孔構造は秀逸で、電極反応を均一化するのに理想的と言える。
詳細な技術説明&理由は省略するが、電極反応の均一化が電池寿命の向上に大きく寄与すると考えている。もし、私が電池メーカーの経営者なら、その技術を買い取ってでも育てたい部材である。
<その3>
LIBは元々、電解質濃度であるLi イオン濃度が1モル/L程度である。これは、従来の水溶液性の電池系のイオン濃度(プロトン濃度)に比べ、数十分の一の低さである。詳細な技術説明&理由は省略するが、電解質濃度の低さは、均一な電極反応を成立させるためには極めて不利な条件である。高性能のLIBを目指すなら、電解質濃度を高くする試みは期待大である。 今のところ、液系では効果は得られていないが方向性としては間違っていないと思う。全固体電池は・・・その電解質は液系LIBより高い電解質濃度を得られるという観点からも有望な技術と言える。もし、私が電池メーカーの経営者なら、この電解質高濃度化の技術も育てたい。

いずれにしても、[この3つの技術を重点的に取り組む]ことが、「BEVを自動車等の移動体市場のボリュームゾーンに仕上げる」ための糧になる・・・と妄想している。

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2023.07.01 先週、Goodenough教授がご逝去されました

・先週、Goodenough先生がご逝去されたことをニュースで知りました。我々のようなリチウムイオン電池の研究開発に携わり、リチウムイオン電池の創世期~技術成熟期~市場拡大期を経験してきた者にとっては・・・一つの時代が過ぎ去ったと・・・感慨深く思う次第です
・実は、一度だけGoodenough先生のご尊顔を拝したことがあり、そのころのことが懐かしく思い出されます。

20年以上前のことですが、フランスのArcachon(ボルドー郊外)で行われたLiBD(リチウム電池ディスカッション)でのことでした。私も講演させて頂くのために参加したのですが、どんな内容を話したのか・・・ほとんど覚えておりません。
しかし、Goodenough先生にお会いした(見かけただけですが・・・)こと、その場面や光景はなぜか鮮明に覚えています。仕事のことは忘れているのに・・・です。
・ランチタイムに独りで牡蠣(Arcachonは牡蠣の名産地)を食べにLiBD会場の近くの海沿いのレストランに行った時のことでした。

どんなきっかけで同席したかは覚えていませんが、隣に東洋人の若者(20歳くらいの学生に見えた)が居て、彼がMITで研究している正極材料の話を牡蠣を食べながら聞いていた時でした。
・その時、80歳くらいの大柄な老人がそのレストランに入って来られ、隣の若者が「あっ、Dr.Goodenoughだ!」と言ったので、初めてGoodenough 先生のご尊顔を拝した次第です。

憧れというか、畏敬というか、この方が、かの有名な大先生と知り、感激したことを今でも覚えています。
・余談ですが、同席した隣の若者が研究していたのはLiFePO4という正極材料であり、このような電子伝導性のない無機物がいかにして電極材料となり得るのかを熱心に説明してくれました。

ひたむきに熱く語るその姿を見て、こんな子が、今後電池産業を引っ張っていくんだろうな・・・と、思ってました。それも牡蠣を食べながら・・・
・思った通り、その後、彼は、大きな功績を残していきました。彼こそ、LiFePO4の開発者のDr.Chiang、その人だったんです。
・彼は当時MITの研究者でしたが、その後、A123というベンチャー企業を立ち上げたり、今では大きな電池カテゴリーに成長したリン酸鉄リチウム電池の基礎を創るなど、その功績は計り知れません。

彼は私のことなど覚えていないでしょうが、私はあの時のことを、Goodenough先生に出会った強烈な印象と共に、鮮明に覚えています。

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2023.03.20 「2035年からの新車をすべてゼロエミッション化する」というEUの目論見・・・最近、ドイツやイタリアが反旗を掲げたようで・・・雲行きが怪しくなってきてます。 それでも世間では、EVが最新流行の自動車のように取り上げられ、皆が皆…右向け右の風潮となっています。
そこで、EVの普及拡大状況を冷静に見てみよう!・・・と思い、ぼーっと眺めてみたらイメージが沸くんではなかろうかと・・・以下のように大まかなイメージを妄想(俯瞰)してみました。

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2023.03.20 EVの普及拡大状況を冷静に見てみよう!
俯瞰その1:BEVの市場拡大について

・「EUでは2035年までに全ての新車をゼロエミッション化、すなわち、同年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止する」・・・とのこと
・このように自動車業界に襲いかかる大きな圧力・・・、今は、「EVこそが自動車の未来像」というのが世間の声ということになってきている。中にはキャズム理論を持ち出して、「EVはキャズムを超えた」という人も出てきている・・・が、果たしてそうだろうか?
・キャズムに関しては顧客主導の市場が前提なので、暫定的な政策的バイアスのかかった市場では成立はしないと思う。補助金が永久に続くのであれば・・・あるかもしれないが・・・
・そこで、EVがどのくらい普及して行くのかを、大まかな規模イメージとして考えてみた。細かな数値予測は優秀な調査機関が出してくれているので、そちらを見て頂くとして・・・それらデータを俯瞰して・・・、「2030年における世界の自動車普及(保有)台数 & その内の「xEV普及台数」と「新車販売台数」の規模イメージ」をまとめてみた


・2030年における普及状況は、まだ大多数が”エンジン車+ディーゼル車”であり、HEV+PHEV+BEVからなるxEVはまだ少ない。その中でもBEVは更に少数派といえる
・また、新車販売台数は普及台数の10%以下であり、そのうちのxEVはほぼ半数くらいで、ゼロエミッション車のBEVは更にその半分以下といったイメージである
・この5年後の2035年に、すべての新車をBEV(またはFCV)にすることが可能か?・・・というと・・・かなり苦しいように思える
・ということで、EUも・・・「ただし、2026年に進捗評価を行い、プラグインハイブリッド技術などの開発状況を考慮して規則の見直しを行う余地は残っている」と言っており、予防線を張っている
・客観的に考えて、今後十年でBEVが自動車のボリュームゾーンにはなるとは思えない。とはいえ、BEVを否定するのも間違っている。BEVに傾倒する世間の方向性に引きずられず、BEVを一つのビジネスチャンスとして割り切って対処するることが賢明な戦略ではなかろうか。
・トヨタがEVに出遅れいていると世間は言うが、私個人としてはトヨタの動きが最も腑に落ちる。むしろ・・・皆が皆・・・右向け右でBEVに邁進している方が不自然・・・ではなかろうか。
・自動車業界においてBEVはまだ少数派とはいえ、電池業界においては急激な変化となっている。従来のHVに搭載されている駆動用バッテリーは1kWh前後が多く、PHVの場合は約10〜20kWh程度のバッテリーを搭載しているのが主流。BEVは軽BEVでさえ搭載電池容量が20kWh程度もあり、車格が大きくなるにつれて搭載電池容量は大きくなり、100kWh超えの車種もある。
・BEVがHEVの数十倍~百倍近くの電池を搭載していることを考えると、BEVは自動車業界の新製品というより電池業界の新製品という感が強い。大手自動車メーカーが電池の自前化を積極的に進めていることは納得できる

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2023.03.20 EVの普及拡大状況を冷静に見てみよう!
俯瞰その2:BEVとCNについて

・2050年のCN(カーボンニュートラル)達成に向け、自動車の電動化・・・特にBEVやFCVなどCO2排出ゼロの車しか許されないという風潮がEUを中心に広がっている。なぜか車ばかりが矢面に立っている用に見えるが・・・これは、ある意味・・・EUの産業政策のバイアスによるものであることに間違いはない。世界の自動車市場における優位性を「日本等から奪い返す」という歪んだ思惑も・・・垣間見られるからだ。
いずれにしても、現時点では地球温暖化阻止という旗印のもと、「CN推進こそ正義」は、誰も文句を言えない状況にある
・ということで、「BEVの推進はCNに貢献するか?」という論点で俯瞰してみたいと思う。
・BEVのCO2排出量はHEVやICEとの比較で数多く論じられているが、主な論点は①BEV充電に使われる電力源によるCO2排出量 と ②LCA(ライフサイクルアセスメント)による搭載電池等の製造等で発生するCO2排出量・・・の2点である。

これら観点の報告はかなり多くあり、ただ境界条件が様々なので・・・CO2排出量はBEVの方が多いとか、少ないとか・・・色々ある(ググってみたらわかる)


・まず、①の論点から・・・

 例えば、石油火力発電所で発電した電力を用い、総発電効率を約35%程度に見積り、BEV走行時のCO2排出量を燃費に換算し、HEVと比較した場合、BEVの方が数%燃費が良い(CO2が少ない)という報告などがあるが・・・
様々な情報を俯瞰すると、今後も進む技術進歩によって総発電効率向上やBEVの電費改善などが将来行われるとして・・・俯瞰すると、BEVの方がHEVより燃費換算比較で10%くらいのメリットを持つ可能性はある
・ただし、これは石油火力発電を前提とした見積もりなので、低効率(20%ほど低い)の石炭火力発電を前提にした場合、BEVのメリットは相殺されるか・・・むしろデメリットに働く可能性が高い
・ということで、エネルギ源別の世界のエネルギ消費量の推移のデータを見てみた

出典:資源エネルギー庁『エネルギー需給の概要等』(2021/07/19更新)

 

その結果、ガス、石油、石炭からなる化石燃料を燃やして発電する割合が85%近くあり、この推移データを見る限り・・・当面(十数年)はエネルギ源の変革は無さそうである。
また、例えば、ノルウエーのように非化石燃料発電割合が90%を超える国でBEVを走らせることは意義が大きいが・・・中国や米国やインドや日本などは70%近い電力を化石燃料を燃やして生成しており、さらに、そのうちの半分近くを石炭火力発電に依存してる国ではBEVの推進はCNに貢献するとは言い難い。
ちなみに、世界の総電力需要量は2022年で26,933TWhと見積もられており、国別でみると・・・その電力消費量は上位4か国(中国、米国、インド、ロシア)で50%以上占めている(https://www.globalnote.jp/post-3705.html)
・これら上位4か国が、現実問題として”主要発電方法を石炭火力発電に頼っている(特に第1位の中国は総電力の内、石炭火力発電が70%近くを占めている)”ことを考えると・・・BEVをこれらの国で走らせることはCNに貢献するどころか、CNに逆行していることになる。 

さらに悲しいかな、これら上位4か国は人口も莫大で、市場も大きい・・・
もしこれらの国が、再生可能エネルギ発電が主流という条件だったら・・・CN貢献度は計り知れない程大きかったのに・・・と残念に思う次第である。

・次に、②の論点から・・・
製造時におけるCO2排出量は・・・ガソリン車に比べBEVの方が2倍以上となるといわれている。これは電池製造の際に多量のCO2を排出するためである。
CO2排出量に関しては、BEV vs ガソリン車 BEV vs HEVの報告は数多くあるが、基本的に、LCA観点では、搭載電池容量が小さいほど、走行距離が長いほど、生涯CO2排出量は少なくなる
・例えば、40kWhの電池を搭載したBEVでは、10万kmほど走行すれば、ガソリン車よりCO2排出量で有利となる・・・といわれている。更に、車格の大きな、例えば搭載電池量が80kWhになると、15万km以上の走行距離が必要となるらしい
・車の走行距離は、一般的に1年間で10,000km程度が目安とされている。ということは、10万km走るためには10年、15万km走るためには15年もかかる・・・
・BEVに使われる電池はほとんどがLIBである。ちなみに、電池製造における電池容量(kWh)あたりのCO2排出量は、例えば正極素材比較では、LFP>NMCとなる。これはLFPの方がエネルギ密度が低いためである。 ただし、寿命はLFP>NMCである
・以上から、LIBの寿命が、生涯CO2排出量に大きく寄与することが明確であり、

LIBの経年劣化を含めたカレンダーライフは、上記のBEV事例では10年以上、15年以上が必要となる。よく車載電池の耐用年数は10年~15年と世間では言われているが・・・・期待値という気がする
・正直言って、車載電池が使われる環境がかなり厳しいことを考えると・・・BEVを10年~15年も使い続けることは、非現実的と思っている。LIBのカレンダーライフの劣化要因を挙げると・・・高出力放電・・・急速充電・・・高温保存・・・充放電回数の多さ・・・寒冷地での使用・・・ヒートショック等々・・・が考えられる。

これら劣化要因をいかに避けて運用するかも重要なポイントとなる
・また、国内で最近販売好調のBEVの軽自動車などは搭載電池量は20kWh程度である。軽の場合、むしろ短い生涯走行距離でも、”元が取れる”可能性があり、商品としてはCN貢献度が高い部類といえる 
・また、寿命が短いなら、途中で新しい電池に積み替えれば・・・という発想もあるが、その時は再び電池製造時に発生する膨大なCO2発生量が上乗せされるので・・・意味が無い

・以上①②を俯瞰すると大きなイノベーションが無い限り、当面の間(今後十数年)は、BEVのCN貢献メリットは少ない、と考えられる
・地球温暖化阻止とかCNとか・・・そんな美しい推進理由を上げなくても、BEVという商品は「NewtypeのVehicle」として魅力的であり、”どのように市場に受け入れさせよう”とか、”このビジネスチャンスをどう生かそう” とか、・・・割り切って考えることが肝要かと思う 
・EUのXXX政策とか、USのXXX法案とか、に振り回されるのではなく、「商品戦略上の魅力的な商品」としてとらえ、きちっと「顧客定義」をして、SWOT分析、5フォース分析などで戦略を練る、恰好の面白い商品ネタ・・・にも見えるのですが・・・

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2023年初頭に、カーボンニュートラル(CN)目標年の2050年をイメージしてみた・・・

・2023年です。あけましておめでとうございます。 
昨年以来、コロナ、ウクライナなどネガティブ事案が多く、日常は不安に満ち溢れ、未来は不透明でしかない、ということを思い知らされました。
・そんな不透明な未来でありながら、産業界はCN達成のための大目標を神輿に大きく動いてきている感が強くなっています。
・そこで、CN目標年の2050年にはどんな状況が実現しているのかを無責任にもイメージしてみました。
・イメージの想定内容は、電池だけに限らず、私個人の気になる「事象」について・・・、是、または否、という形で表にしてみました。表は、是(100%)———否(0%)で表現しております。
・それぞれ・・・どうしてこの判断に至ったかは、「話せば・・・極めて長くなる」ということもあり、今回は”単刀直入”に、「イメージの結果」だけを標記させて頂きました
・これは、あくまで2023年1月初旬の・・・私個人のイメージであり、来月には変わっているかもしれないので、お聞き流して頂ければ幸いです。

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ドローンが急激に普及してきたが、ドローンのための電池として何が適しているのか・・・・

最近、ドローンが活躍する場面が一気に増えてきた。例えば、物流支援、高所や人が立ち入りできない場所での視認検査、空中撮影、軍事用途・・・等々である。基本的にドローンの場合、電源としては重量エネルギ密度が高いものが求められる。
LIBは比較的エネルギ密度が高い電源として重宝されてきたが、更にドローンの機能を拡大するためには、更に高エネルギ密度電池が求められるのは必然的である。
燃料電池の活用も非常に有望な選択肢であるが、蓄電池としては・・・やはり・・・金属リチウムを負極に用いた電池・・・金属Li蓄電池が最適であると思っている。 というのは、LIBに比べ、圧倒的にエネルギ密度が高くできる可能性があるからである。
ただ、寿命や安全性はLIBに比べると劣ることは否めない。しかし、これら短所を理解したうえで活用方法を考慮すれば、一つのビジネスモデルが構築できると考えている。 
例えば、「寿命は300サイクルで十分と割り切る」、「充電は低速充電を基本とする」、「利用目的を輸送、検査、撮影・・・などに限定する」・・・といった活用方法である。 
こういった目的のもと、金属Li電池の応用研究やシステム開発を産学官でより一層・・・積極的に行って頂きたいと思っている次第である。

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【ブログ内ひとりごとからの再掲載】 
全固体電池・・・・開発方向を・・・圧倒的長寿命の高耐久性電池に絞ったら・・・いいかもしれない

・全固体電池は何を目指して開発しているのだろうか?・・・と・・・時々思う。
・従来のLIBでは、充放電に伴う電極の膨張収縮があるため・・・充放電の繰り返しで、メカニカルな破壊が進み、電極内の電導パスが切断されることによる劣化が進行したりする。膨張収縮度合いが比較的大きい高容量電極活物質になれば、より一層この劣化は深刻化する。しかしこれは電極そのものの問題で、LIBは電解質が液体であるため・・・電解質ー活物質間の界面は”濡れ”状態を維持できている。つまり、活物質ー電解質界面の物質移動に関しては機能を損なうことは比較的少ない。
・一方、全固体電池の場合・・・電解質が多少柔らかい材料であっても、充放電に伴う膨張収縮によりメカニカルな破壊が進行し、固体粒子間の電子伝導やイオン伝導が失われていくことは明らかである。インターカレーション型の電極材料を使う限り、「高容量化=膨張収縮拡大」であり、全固体電池で高エネルギ密度電池(cell)を目標とするのはおそらく間違っている・・・と思う。 

しいて言えば、従来のLIBで用いられている3元型正極やグラファイト負極もそのメカニカル特性から全固体電池には向かないと考えている。 つまり、全固体電池を搭載して”航続距離を伸ばす”というのは、電池寿命を犠牲にして成り立つものである。
よく考えると・・・その方向は・・・”LC”や”WtoW”の観点からもカーボンニュートラルに逆行する・・・ものとなってしまう。
・しかしながら、全固体電池では、電池(cell)そのものの安全性、構成素材の熱安定性の高さは期待できる・・・と思っている・・・ので何とか実用化してほしい。

・ということで・・・、少し視点を変えて・・あえて高エネルギ密度化を狙わず、圧倒的な長寿命を有する超耐久性電池を狙ってみてはどうだろう?
・正極や負極の活物質の中には、充放電での膨張収縮が極めて小さいものがある。例えば、無歪正極材料Li2Co1.8Ni0.2O4 、寸法安定性LiCoMnO4や無歪Li2Co2O4などである。負極では、チタン酸Li(LTO)などがそれにあたる。
・元々、固体電解質はLIBの電解液のような電気分解による副反応が無いこと、有機物でないため耐熱性が優れていることなどから・・・長寿命・高耐久性が期待できる電池系と言われてきた。 

この全固体電池が持つ潜在的な耐久性と上記無歪み材料を組み合わせることで・・・非常に耐久性の高い電池を得ることが期待できないだろうか?
・単セルとしてのエネルギ密度は下がるが、バイポーラ型の電極構造の採用と電池Packの冷却機構部分省略等が適用できるとしたら、実用に資する蓄電池が期待できるのではないだろうか?
・例えば、カレンダー寿命が現行LIBの数倍となる蓄電池や・・・半永久的に使える電池が出現すれば、ある意味・・・世の中が変わる可能性がある。 
・たとえLIBの50%~70%程度の容量しかない電池でも・・・航続距離を望まない小型EVには使えるし・・・、さらに、安全性も高く、寿命が圧倒的優位なら・・・脱炭素という大きな目標に対して有意性は極めて高い。
・とにかく、耐久性が保証されるということは・・・長期の使い回しが心配なく行えることなので、電池再利用(リユース、リサイクル等)市場の構造も変わってくるし、電池交換方式のEV普及構想の実現にも寄与する。 ただしこの場合・・・特定の運用ルールや規格化は必要となる。

そのようなことを想像すると・・・全固体電池の開発方向の再考察も悪くない・・・と感じてしまう。
例えば、産学官連携プログラウムなどの中で、このようなテーマの開発を日本が先んじて行なうことで競争力強化につながらないだろうか?・・・などと思う次第である

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【ブログ内ひとりごとからの再掲載】                エネルギ密度が2倍になるとか・・・5倍になるとか・・・そんなニュースをよく見るが、本当かな? 

・電池のエネルギ密度を〇〇倍にするって・・・ほんとは凄いことを成し遂げようとしている・・・ことを知ってほしい。 特に、電池というのがCellのことを言っているのなら・・・それは凄いことなのです。

・例えば、現行の電池構成が、イメージ図1のように、正極と負極の大きさが同等(1:1)で容量バランスが取れていると仮定する。
正極の容量が2倍になる正極を開発できたとすると、イメージ図2のように、正極の大きさは元の1/2で同じ容量を発現できることになる。
この時、負極の能力が変わらないとすると・・・1/2の正極で元の大きさの負極と容量バランスが取れていることになる。正極が1/2になったので、
イメージ図2のように全体の1/4が余ることになるが・・・この1/4の部分に、正極と負極を埋めて全体を満たして電池としての容量アップを図ることになる。
この場合は・・・イメージ図3のように・・・この余った1/4の部分に・・・正極:負極=1:2の能力比で追加を行えばいい。 正極基準で考えると、正極は1/3増えたことになる。 すなわち、正極の容量が2倍となる正極を開発した場合は、電池容量は、約33%増加する計算となる。 


・ということは、電池容量を2倍にしようとすると正極と負極を同時に2倍の能力にする必要がある。 よくよく考えてみると、一方の能力が変わらない場合は、正極か負極か・・・いずれかの能力を100倍にしようと1000倍にしようと、電池容量を2倍にすることはできない。 

・このように、電池容量は簡単に増加できる代物ではないことを理解してほしい。

・エネルギ密度は、Wh(電圧V×容量Ah)/kg、またはWh/Lなので、電池系の起電力Eが2倍になればエネルギ密度は2倍になるが、起電力が2倍になるような材料を開発するのは高度なScienceの問題で簡単ではない。  Cellのエネルギ密度Upは困難な課題であることは間違いない。 これがPackのエネルギ密度の話をしているのなら・・・また別である。 Packの場合、Cellのエネルギ密度が変わらなくても・・・・例えば、冷却機構部分が全体の半分を占めており、耐熱性の電池開発で冷却機構が要らなくなると・・・エネルギ密度はいきなり2倍になる

・要するに、電池の容量が××倍になったというニュースを見たら・・・、それはCellのことを言っているのか? その真実を検証してほしい・・・
ということで・・・つぶやいてみました

  

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【ブログ内ひとりごとからの再掲載】                   Ni richほど・・・容量(mAh/g)が大きい・・・というのは・・・なんか変でしょう?

・LiCoO2のCoの位置すべてを同じ遷移金属のNiに置換するとLiNiO2となる。 Niの原子量(58.693)とCoの原子量(58.933)は、
ほぼ同じ・・・ということはLiMeO2としての分子量はほぼ同じと考えられる。  また同じ化学式で、結晶構造(どちらも空間群R-3mに帰属)も同じということを考えると、Liを蓄える量は同じと考えられる。 ということは、容量(mAh/g)が、LiNiO2>LiCoO2となるのはなぜ? ということになる。

 
・LIBの充放電はある固有の充電終止電圧と放電終止電圧間で行われる。これは電解液の電位窓(電気分解しない電位範囲)の関係で決まる。例えば充放電は4.2V-3.0V間で行う電池系というのは・・・4.2Vを超えた充電をすると電解液が電気分解したり、3.0Vを超える放電をすると電極活物質が分解するので・・・この電位窓の範囲内で充放電は行われる。

・LiCoO2とLiNiO2を同一条件のCellにし、充放電を4.2V-3.0V間で行うと、圧倒的にLiNiO2の方が容量が大きくなる。 何故だろう?

・これは充放電の電圧プロファイルをよく見ると分かってくる。 LiCoO2に比べLiNiO2の充放電電圧が低い位置を這うからである。
下にイメージ図を示すが、電圧が低いから・・・充電終止電圧に到達するのが遅れるため・・・充電が深くなる・・・という仕組みである。 さらに、細かいことを言えば、Liの脱離量が多くなるので結晶に負担がかかり・・・寿命が・・・××・・・ということになる可能性が高い。

・そのため結晶の安定化・強化の目的で、NiとCoの複合酸化物としたり、更にAlを添加 したり(これがNCAとなる)、Mnを添加したり(これがNMCとなる)して・・・、
そこそこ使える活物質の開発の成功したわけである。 世間が高容量を切望していることもあり、より Ni richの活物質開発が進み、NMC811といったNiが80%も入った活物質も利用されることになった。 

・ああそんな簡単なことか・・・と思われるかもしれないが、実は、この新材料を使いこなすためには・・・周辺材料や電池設計の改良・・・等々の途方もない技術的努力が、電池技術者によって行われていることも知ってもらいたい。  

ということで、・・・つぶやいてみました

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2022.09.03 EVの急速充電化の動きが活発ですが・・・ほんとに大丈夫?

・ICE(内燃機関エンジン)車はガススタンドで10分もあれば給油できます。この利便性に近づけるために、EVにおいては”急速充電できること”に対する要求は非常に高いものと思われます。
では、急速充電とはどのくらいの時間を想定しているのでしょうか? 「とある記事では1時間充電を急速充電と呼んでいましたが、市街の充電ステーションで1時間はつらいものがあります。せめて15分くらいで完了したいものです。」といった具合にEV市場側からの期待は膨らんでいます。

・EV搭載電池の多くは”LIB(リチウムイオン電池)”ですが、この電池系は急速充電に向いているのでしょうか?

・SCiBなどの一部の電池には急速充電に比較的向いているLIBもありますが・・・、市場の要求とは逆に、電池側(電池技術に携わる側)から見ると・・・「ほとんどのLIBは急速充電には不向き」と・・・考えています。

・特に、今主流の”三元系正極材と黒鉛負極を組み合わせたLIB”などは”不向き”な系と考えています。この”不向き”は決して急速充電ができないと言ってる訳ではありません。恐れているのは、急速充電を繰り返すことによる・・・”電池劣化の加速” ”安全性の低下”・・・です。

・電池の劣化が早くなるとLIBのLC(ライフサイクル)の観点から、脱炭素の方向に逆行する懸念さえあります。

・でも、一番怖いのは、局所分極によって負極の微細構造の中に金属Liが析出することです。この反応はほとんど不可逆なので・・・それが積み重なると・・・極めて重篤な安全不具合につながる可能性があることです。要するに、車載火災が起こりやすくなるということです。

・この不具合は、現行LIBの”電解液のLiイオン濃度が希薄”という本質的な問題、LIBの電極品質に寄する”微視的な電極反応の局在化”などの構造的問題などが絡み合って起こると想定される。
電気化学の講義の初期に学んだ「 Nernst の式」をイメージすると、なんとなくお解り頂けるのではないかと思います。

・話は戻りますが、15分で充電完了するためには平均4Cレートで充電することになりますが、局所分極を避けるためには充電をSOC60%くらいに抑える(満充電ではないので充電後の走行距離が短くなる)ような施策が必要かもしれません。

・電池側の技術革新でこの課題を解決できない場合を想定すると、「低レート(0.2C~.01C)で充電したLIBを電池交換式のインフラの中で運用する」という方法は、電池の標準化などの課題をクリアしなければなりませんが、電池側から見ると推奨できる施策と思います。

・以上のような懸念は、EVの車載電池含めた蓄電池事業を進めている産学官の皆様方は十分ご承知の話かもしれませんが、気になって仕方が無いのでつぶやいてみました。