2024年の年初 7つの妄想
●2024年に記載したこの「7つの妄想」について、各妄想ごとに・・2026年における見解を簡単に取りまとめました
「2026年の 見直し+新妄想」ということでレビューしたものを下記に示します
これまで、本サイトでは多くのBattery関連情報を紹介させて頂きました。それら情報は、すべてが鵜吞みに出来るものではないことはご存知と思います。 特にインターネット網を含めたメディアの中で発信される情報には、”曖昧さ”、”非論理的”、”不自然さ”、”恣意的”・・・なものも多くあります。
いずれにしても、蓄電池の技術動向や市場動向は、その混沌さも含め非常に興味深いものでもあります。
そこで、私なりに「Battery未来予想図」、と言うか「Battery技術、及びそれを取り巻く市場のあるべき姿」ついて、以下7つのテーマで妄想してみました。あくまで妄想なので、お聞き流し下さい。
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①従来のLIB(正極にNMCなどを用い、負極に黒鉛を用いた電池)はBEVの駆動用電池として将来性はあるか?
妄想①今のところBEV用としては将来性は無い
●当面はBEV市場に出回るが、市場拡大に伴い耐久安全性の事案(充放電、特に急速充電を繰り返していくと電池が燃える問題)が頻発に起こる。
●2028年頃から、この種のLIBを用いたBEVにおいてこの事案が社会問題としてクローズアップされ、BEVの普及に水を差すこととなる。
●この電池系の不安全現象は、負極に電極電位が卑な黒鉛を使っていることと、電解質のキャリア(LIBの場合Li+イオン)濃度が低すぎる(1モル/L程度)ことが原因と考えている。
●ただし、この種の電池のエネルギ密度の高さは捨てがたく、移動体(車両)以外の用途では重宝される。
●逆を言えば、負極に電極電位が貴な活物質を用い、キャリア(LIBの場合Li+イオン)濃度の高い電解質が開発できれば、BEV利用に適合したLIBが得られると妄想している。ただし、この場合は弱冠のエネルギ密度ロスを覚悟しなければならないが・・・
2026年の 見直し + 新妄想
●BEV市場でのLIBの拡大は依然として進んでいる
●NMCやNCA系LIBの高エネルギ密度タイプの電池の搭載については安全性の懸念はいまだ消えず、いずれ社会問題になると考えている
●これら高エネルギ密度タイプのLIBは、今のところBEV用としては将来性は薄い
●とはいえ、高エネルギ密度タイプのLIBの価値は捨てがたく、安全性を担保した形でBEVの駆動用電池として生き残るが、比較的上級な車に限られると考えている
●LFPが登場し、これらがBEVに搭載されるようになったことで、BEV市場でのLIBの将来性は高まってきたと考えている
●特に、LFPは安全性に優れているため、BEVの世界ではおそらくボリュームゾーンになっていくと考えている
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②リチウム全固体電池はLIBの救世主となりえるのか?
妄想② 全固体電池は実用化されるが、すべてLIBに置き換わることは無い
●固体電解質の結晶学的な研究開発の技術的完成度はかなり高くなってきている。あとはその使いこなしとなるが、これがかなり厄介な代物である。特に、Liイオンが移動しなければいけない界面(活物質/電解質、電解質粒子間粒界など)を均一にかつ再現性良く作製するための製造技術が難しい。加えて、それを量産化に持って行くという段階は更に難しいと予想される。
●また、性能を引き出すために電極層を加圧する(拘束装置で)手法は非現実的としか言いようがない。
●製造技術面で画期的なブレークスルーを期待するものの、適正コストで量産できる目途も今のところ無い。
●2030年前半にはLIBより高性能な電池がそれなりの高コストで生産できると妄想している。ただ、市場は限られて来ると思われ、LIB市場のほんの一部を置き換えするものと妄想している。
2026年の 見直し + 新妄想
●完全無機固体からなる全固体電池は製造・生産の困難さの壁にぶち当たっている感がある
●有機物とのハイブリッドの半固体電池などが全固体電池という名前で登場しているものの、これは厳密には全固体電池ではない
●全固体電池が市場に現れるというニュースも多々あるが、量産性が解決しているとは・・・まだ思えない
●いずれにしても、全固体電池が商品としての地位を築くのは当分先のことと思っている
●出光・トヨタが進めている硫化物系全固体電池がトヨタの車に搭載されることを大変期待している。おそらく搭載車両は限定生産の超高級車になると思っている
●ただ、硫化物系電解質は空気に触れると強烈な硫化水素を発生するため、何か(事故)あって、電池が壊れたら、とんでもない悪臭が広範囲に蔓延するため危険
●ことになるので・・・よほどの硫化水素漏れ技術的解決策現実論として実用化は市場受け入れ性は低い。
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③そもそもBEVは自動車市場の主流となるのか? 2035年には、新車はすべてBEVに置き換わるのか?
妄想③ BEVは自動車市場で主流になることは無い。
ーーー地域動向
●既にBEVの市場動向は国や地域ごとに大きな差が出来ている。そこで、現時点での主要市場である欧州、北米、中国について妄想してみよう。
●欧州
既に、北欧諸国では電気自動車(EV)の普及率が50%を超えている。その他の西欧、東欧ではまだ普及率は低い。補助金や優遇税などの恩恵が普及の後押しをしているが、いずれ成長は失速すると妄想している。さらに、EUは足並みが揃うことが困難な集合体でもあるので、同じ方向への推進力が弱いのも弱点。
●北米
補助金や優遇税などの恩恵があっても、まだ普及率は5%程度。おそらく、BEVの利便性の低さを払拭する方策や普及のための周辺コストが膨大になることを考えると、普及拡大は困難だと妄想できる。また、USなどは政権が変われば方針が変わるので成長を保証できる理由も無い。
●中国
既に、30%近くの普及率を確保している。特に、廉価版のBEVが市場を引き上げているところがある。また、補助金や優遇税などの恩恵が普及率に大きく寄与している。これら恩恵がいつまで続くか? また、今は新車が市場を引っ張っているが、数年後に拡大する中古車市場や廃棄電池のリユース、リサイクル等の社会の仕組みの構築は、かなり巨大な国家であることから鑑みてかなり困難を極めると予想される。さらに、中国経済が少しづつ疲弊して行っている現状を目の当たりにしていることもあり、これ以上の市場の拡大は難しいと妄想している。
いずれにしても、BEV市場拡大はあるところで停止し、自動車市場の主流にならないと妄想している。
ーーーセグメント動向
●BEVは無くならないが、市場としては限られたセグメントを中心に成長すると妄想している。そのセグメントは、2つある。
●一つは、「軽自動車~コンパクト車(Aセグ~Bセグ)」で、街乗り自家用車、小型商用車が主流の領域となる。おそらくこの領域は2027年頃から市場が拡大して行く。この「小型車BEV」に使われる電池は、比較的低価格のリン酸鉄系LIBなどで、主に低速充電で運用される。この領域では、比較的市場規模も大きく、電池交換式のシステムも発展すると妄想している。
●もう一つは、「中・大型乗用車(Dセグ~Fセグ)」の特に高級車の領域となる。この「中・大型高級車」に使われる電池は、急速充電対応が必要条件となる。多少高価格となるが、開発中の全固体電池や、東芝の開発している負極にチタン酸Liを用いたSCiBやその開発品が採用される可能性が高いと妄想している。
ただし、この「中・大型乗用車領域」は比較的市場規模は小さく、ライバル車種として水素燃料電池車も一定の市場を形成することになる。
●普通車(Bセグ~Eセグ)の多くは、HEVの改良型が主流となると妄想している。
2026年の 見直し + 新妄想
●BEVは市場での地位は着々と向上していくと思うが・・・自動車市場での主流という地位に到達するのはまだ先の話と考える
●欧州は、特に北欧などBEVが90%以上の占有率をもつ国々もあり、着実にBEV占有率は向上していくものと考えられる
●北米は、もともと普及は進んでいない地域でもあり、さらにトランプ政権下で逆風が吹いて、当面BEVの拡大は見通せない
●中国もBEV市場は着々と拡大してきている
●ただし、中国経済の疲弊に関する報道も多く散見され、補助金頼みのBEVが主流となっていくかは不透明な部分が多い。市場拡大の急停止の可能性もあり
●BEV市場の最も深刻な課題は、充電ステーション等のインフラ整備、拡大する中古車市場や廃棄電池のリユース、リサイクル等の社会的仕組みの構築
●セグメント(車格)ごとに適した電池系が選択され、住み分けが進むと考えられる
④将来、HEVは無くなるのか?
妄想④ HEVは無くならない。
●HEVは、形を変えながらも自動車市場の主流として存続する。少なくとも当面(ここ20年)は、化石燃料エンジン搭載タイプのHEVが最大の保有台数を維持すると妄想している。
●ただし、カーボンニュートラルの要望もあり、HEVも進化して行く。2030年を超えたあたりから、化石燃料に替り低カーボン合成燃料エンジン搭載HEVや水素エンジン搭載の改良型HEVなどが出現してくる。それらが、時間をかけて化石燃料タイプと入れ替わっていくと妄想している。
●また、燃料駆動型の発電機を搭載したEVである「レンジエクステンダー」タイプの車両も外部充電器を必要としない利便性から発展する。この場合も燃料は低カーボン合成燃料や水素が要望されるが、実用化と市場納得性に少し時間を要するため、その存在感が増してくるのは2035年以降になると妄想している。
2026年の 見直し + 新妄想
●化石燃料が枯渇しない限り、HEVは無くならない (ただし、有事による燃料価格高騰なども懸念され、その場合はICEはもちろんのこと、HEV存続にはマイナス影響)
●低カーボン合成燃料や水素エンジン対応のHEVは試験的に市場投入されるも・・・2035年頃までは市場形成には至らない
●レンジエクステンダーは、低カーボン合成燃料や水素燃料駆動型の発電機を搭載する方向で開発が進むが・・・2035年頃までは市場形成には至らない
⑤物流用途の大型トラックや大型トレーラーの電動化は進むのか?
妄想⑤ 電動化は段階的に進んでいく。FC車も有望
●基本的に電池技術の発展に準じて段階的に進む。
●長距離輸送が望まれるためBEV化は大容量の電池を必要とする。電池の搭載量は荷物積載量とのトレードオフとなるため、高エネルギー密度電池の搭載が特に要望される。
●当初、電池としてはハイニッケルLIBなどの高容量LIBの搭載が進む。これら商用車は比較的計画充電が可能ということで、低速充電での運用が進められると妄想している。物流基地における電池交換式採用も普及するかもしれない。
●一方、2028年頃からこの電池系での急速充電における耐久安全性の問題が明らかになる。しかし、低速充電と徹底した安全管理の元で何とか運用は継続されていく。
●2030年頃に、耐久安全性と高エネルギ密度に優れた新型電池が実用化され、搭載電池の新型電池への更新が進んでいく。新型電池としての有力候補は「全固体電池」である。この全固体電池はセルとしてのエネルギ密度は従来LIB並みでさほど高くはない。だたし、冷却システムや電池管理などの周辺構造を簡素化できるため、パックとしてのエネルギ密度は高くできるというメリットがある。
●BEV化の流れと並行するように、すでに実証実験は進められているが、2025年頃から「燃料電池(FC)搭載トラック」の市販化も進められて行く。特に、液体水素の利用を可能とする超低温容器システムの開発が進み、2028年頃から液体水素・FC搭載大型トラックの市販化が始まると妄想している。
●2030年頃からは、液体水素・FC搭載大型トラックの本格的な市販化・市場拡大が期待されるが、FCの触媒技術の革新(貴金属不使用)の成功が必要条件となる。
●いずれにしても、全固体電池等の新型電池の開発の成功、またはFCの触媒技術の革新(貴金属不使用)の成功が市場の方向を左右する。いずれも不首尾の場合は、従来LIBが、低速充電と徹底した安全管理の元で何とか運用を継続していくと妄想している。
2026年の 見直し + 新妄想
●大型車両(トラックやトレーラーやバス)はむしろ電動化に向いている
●物流用途は計画運用が可能であるため充電インフラとの相性は良く、電動化は着実に進んでいくと考えられる
●FCは触媒技術等の課題があり商用的にはまだ時間がかかる
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⑥「空飛ぶ車」は社会インフラとして実用化するか?
妄想⑥ 社会インフラとしての実現は当面は困難
●少なくとも人を乗せて飛行するシステムとしては、安全上の課題が完全に解決されるのに相当の時間が必要。
●2030年頃から本格的な実証実験が進められ、課題の抽出が行われる。安全に運用されるシステムとしての確立は、うまくいっても2040年以降と妄想している。
●安全性も重要だが、社会インフラとしてどのような形で活用されていくのかのイメージがいまひとつ浮かばないことと、これが絶対に必要であるという社会ニーズが不透明という問題もある。
●「空飛ぶ車」が社会インフラとして街中を縦横無尽に飛び回る時代は来ないか、来たとしても、2050年以降の相当先の時代になるだろうと妄想している。
2026年の 見直し + 新妄想
●夢ではあるが、技術的、経済的、および社会的信頼性を鑑みて・・・商用的な実現は極めて困難
●20年後も商用化はされていないと思う
⑦金属Liを負極とする蓄電池は実用化されるか?
妄想⑦ 用途を絞って実用化が進む
●金蔵Liを負極とする蓄電池は究極の高エネルギ密度電池になり得る電池系である。ただし、第一種電極の宿命で長寿命サイクルを要求する用途には不向きな電池系。低速充電仕様でも300サイクルくらいまでが限界と思われ、BEVなどには使えない。
●ただし、エネルギ密度が極めて高いため、ドローンなどへ搭載する電池としては極めて有望。物流用途のドローンの将来性は高く、これらの市場では金属Li蓄電池が大きく貢献していくと妄想している。
●安全性と信頼性を確保するためには、従来LIBと比べると金属Li蓄電池は「より均一な電極反応」を実現する必要がある。そのためには、高精度の電極作製技術が要求される。また、セパレータの均一性も大変重要なポイントとなり、例えば3DOMセパレータのような理想的なLiイオンパスを形成するセパレータが必須条件になると妄想している。
2026年の 見直し + 新妄想
●長寿命サイクルを要求する用途には向かない
●エネルギ密度が極めて高いという利点は捨てがたく、用途を限った形で発展していく可能性は高い
●特に、ドローンに搭載する電池系としては極めて有望で、ドローン市場対応だけでも生き残れる
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